RISEKI ポーランド 書展


 Riseki’s exhibition in Poland





『日本のカリグラフィー』

― 線で描かれる物語 ―


重みの下にしなって折れ曲がった線は「弱」の意味を象徴する。

なでつけられた最後の数画を伴って、

あっという間につかみ取られたような文字―これは「速」。

市立美術ギャラリーでは、芸術普及センター(O?rodek Propagandy Sztuki)の

提供により、日本のグラフィック展を開催し続けているが、

今回、ギャラリー『Chimera』にて、

利石(Riseki)―日本書道界の大家―の書道展をオープンした。

むしろそこには大家の生き様を見ることができる。

利石(Risaki)―橋本利石氏は東京出身で、1996年以降毎年訪問し、

彼の心の憩いとなる場所が、このポーランドなのだ。

「皆さんの国の人々と触れ合うとき、何か失われた価値あるものを

取り戻すことができるような感じがするのです」と言う。

折にふれてこのヨーロッパの地で、自らの創作展を企画し両国の絆を築くことで、

"日本大使"としての役割をも果たしている。

      批評家は、利石(Riseki)をその字形の美しさ、繊細さ、自由さを高く評価する。

Chimera(キメラ美術館)での展覧会を通して

我々もその評価を自らの目で確かめることができる。

壁に吊り下げられた大きな黄色、あるいは青味がかった白いボードには

それぞれに一つの文字が描かれ、或いはまた扇、縦長の大きな軸もある。

これが日本で使われている中国の「文字」の、芸術的解釈なのだ。

利石は書道について「『にじみ』や『かすれ』、またあらゆる特徴的な線の中に

書家の内面の気持ちや感情を映し出す鏡、ともいえる芸術」と語る。

彼の筆にかかると文字はその意味を汲み取りやすい明瞭な「言葉の絵」となる。

各線の太さやしなやかさ、墨の濃さなどでめりはりがつけられることによって、

その線画は文字の内容を物語る。厳然とした言葉は濃い墨汁で力強く

安定した線によって描かれ、"弱い"言葉はやわらかくかすれ、

揺らいだぼんやりとした字形を映し出す。

漢字は攻撃的なもの、繊細なもの、自然体なもの、表現力豊かなもの、

 静的なもの、バロック的に大胆に構築されたもの、

また、こぢんまりと構成されたものなど様々だ。

飛び散る墨が「爆」を、「明」では蛍光紙に散らされた金色のハネが、

「舞」はあちこちに飛び跳ねる線が、それぞれの漢字の意味を象徴する。

時として氏は装飾性を求めて模様の描かれた紙に書くことで、

墨の無いところでははっきりと見えないそれらを

漢字の背景から引き出すということも試みる。

興味深いのは、細長い和紙に一度に描かれたいくつかの漢字で、

これらは一つの言葉を表すのみならず、物語全体を表現する。

オープニングセレモニーの後、利石は解説しながら書道の実践を披露した。



 『選挙新聞』(Gazeta Wyborcza) 2002年10月17日、 ポーランド(POLAND)




戻る
戻る